2017年4月から当学会の会長を拝命致しました高木です。 会則冒頭にあるように本学会の目的は『動物細胞工学の進歩と普及を図る』ことですが、その技術や研究の内容は時とともに変化してきました。
例えば、1980年代の動物細胞培養による物質生産ではインターフェロンなどの少数の生産物のみが想定され、技術的にも『微生物培養のマイナーチェンジによる動物細胞培養への対応』との傾向がありました。しかし、2000年代に入り抗体医薬の出現とともに動物細胞工学の重要性が増しただけでなく、『大幅なスケールアップ』、『シングルユース』はては『連続化』まで技術や研究のテーマとして議論されるようになりました。 また初代細胞の医療応用に限定するとほぼ『ハイブリッド型人工肝臓』だけだったのが、『各種幹細胞活用の細胞医薬』、それに伴った『CPCやロボット』、『細胞品質評価技術』などと動物細胞工学の分野そのものも拡張されてきました。
一方、食品の機能性研究が1990年代から開始され、それらの成果は特保を代表とする機能性食品として結実してきましたが、その過程で食品の機能性を、培養動物細胞を利用した実験系で検定する研究が盛んに行われ、食と健康をめぐる研究・開発における培養動物細胞の意義も大きく変遷してきました。食品研究においてはヒトでの作用を最終目的とするため、実験動物での検証が重視されることが多いですが、そこに至る過程で動物細胞培養技術が果たす役割は今後もますます重要になっていくと予想されます。
今後もおきるだろうこのような変化を、動物細胞技術に関わる方々が一喜一憂することなく冷静に見極め、技術開発や研究の方向を定めるための環境、すなわち会員間の情報交換を整えることが当学会の大事な役割だと感じています。
もちろん、動物細胞工学の継続的発展のためには、会員同士の結束と切磋琢磨、および若手の活動奨励も重要と考えています。
具体的には、以下の4つの重点実施項目を挙げたいと思います。
【会員間の情報交換】
●会員の皆様が気軽に読みやすいメールニュース方式のニュースレターを開始するとともに、読みたい欲しい情報が満載の中身に変えていきます。
●動物細胞工学のトレンドもグローバルに変化します。そういった国内外の研究トレンド情報を会員間で共有化すべく、国内のシンポジウムだけでなく、欧米やアジアとの様々なかたちでの交流も進めていきます。
【会員同士の結束と切磋琢磨】
●会員間の自由な組み合わせと発想での外部に向けたプロジェクト提案を推奨します。
【若手の活動奨励】
●5歳毎に年齢層を区切ると、25-29, 30-34, 35-39歳の会員はそれぞれ全会員中の2〜9%以下と少ないが、40-44, 45-49, 50-54, 55-59, 60- の年齢層はいずれも12-22%と多いというデータがあります。この偏りを修正すべく、若手会員を活性化するとともに、若手会員数を増やす試みを行います。
会員の皆様のご協力と動物細胞工学にご関心のある方々のご参加をお願い申し上げます。